フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ
ディックファン号泣の素晴らしいドラマ
★★★★★★★★☆☆(8)
PKディックの短編小説を
現代のテイストに置き換えることで
ディックが描いた警鐘や夢を
今の社会に問うような作品になっている。
人権の抑圧・全体主義・共産社会への恐怖
合理化の行く末・プロパガンダ・ロボット社会への恐怖・
思想による社会の分断・権力による洗脳 etc
1. 真生活
未来の女性警察官が、聡明なゲームデザイナーと頭脳を共有し、恐ろしい計画を立てた暴力的な殺人鬼たちを追跡する。
時空を超えて2人の意識が混ざり合うというのは面白い
アマゾンプライムにおいてはエピソード1
原作「展示品」(1954)
(論創社ダーク・ファンタジー・コレクション『人間狩り』収録)
2. 自動工場
我々が知る世の中がもはや崩壊しているにもかかわらず、ある巨大な自動生産体制の工場は、消費者主義の原理にのっとり稼働し続けていた。
量産を続ける自動工場に社会主義的なアイロニーを感じられる良作
ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか考えさせられる深さ
原作「自動工場」(1955)
(ハヤカワ文庫SF『時間飛行士へのささやかな贈物』収録)
(ハヤカワ文庫SF『ペイチェック - ディック作品集』収録)
3. 人間らしさ
愛のない結婚生活に悩む女性が、ある日突然、彼女を精神的に苦しめてきた夫の魂が何者かに乗っ取られたことに気づく。だが驚くことに、夫は優しくなっていた。
PKディックの作品によく出てくるテーマ、本物の価値がある偽物は偽物?てきな
原作「人間らしさ」(1955)
(ハヤカワ文庫SF『時間飛行士へのささやかな贈物』収録)
4. クレイジー・ダイアモンド
平凡な男エドの前にセクシーな人造人間の女性が現れ、彼の人生を一変させるかもしれない違法な計画を持ちかける。
エンディングに現実なのか幻想なのかよくわからなくなるのはPKディックの王道
原作「CM地獄」(1954)
(ハヤカワ文庫SF『変数人間』収録)
5. フード・メーカー
高度なテクノロジーがない世界では、テレパシーのできるミュータントだけが、遠距離通信の唯一の手段になっていた。
このドラマがイギリスのチャンネル4で初放送された際のエピソード1
制作費も一番かかっている感じ。
水草が川にそよめくオープニングは
タルコフスキーの惑星ソラリスへのオマージュ?
原作「フード・メーカー」(1955)
(ハヤカワ文庫SF『トータル・リコール』収録)
6. 安全第一
小さな町で育った少女が、社会に不安を抱きながらも、母親とともに未来的な大都市へと移り住む。セキュリティーとテロ対策が重視される都会の暮らしは初めてで、学校生活も恐怖と妄想に駆られる日々となる。
権力による管理社会へのアイロニー
原作「フォスター、おまえはもう死んでるぞ」(1955)
(ハヤカワ文庫SF『人間以前』収録)
7. 父さんに似たもの
エイリアンが密かに家々を侵略し、世界が危機にさらされていた。幼い主人公のチャーリーは、人々が危険なモンスターに変えられていることに気づき、想像を絶する困難な選択を迫られる。
PKディックというよりスティーブンキングのB級作品っぽい
少年たちが力を合わせてバケモノと戦う感じも
原作「父さんもどき」(1954)
(ハヤカワ文庫SF『人間以前』収録)
8. ありえざる星
安っぽいツアーばかりを請け負う2人のもとに、もうろくしたと思しき老女が現れ、地球へ戻る旅をリクエストする。
どう捉えたらいいのか?
嘘も方便みたいな?
原作「ありえざる星」(1953)
(ハヤカワ文庫NV『地図にない町』収録)
9. 地図にない町
交通局の平凡な駅員が、ある日、一部の乗客たちが存在しないはずの町に向かっていることを知る。
生活の中の不幸を消し去ることができる街で
精神疾患が徐々に悪化することで暴力をふるう
息子を忘れ去るも、
その不幸が自分の運命であり
本当の家族の幸せなのではないか?
といったところまで立ち返る
地味ながら良くできた1篇
原作「地図にない町」(1953)
(ハヤカワ文庫SF『人間以前』収録)
10. よそ者を殺せ
広告板から死体がつるされていた。見るからに殺人事件だったが、ある政治家が暴力を勧める声明を出したことで、人々は不可解なことに素知らぬ顔で通り過ぎていく。
近未来社会、よそ者を殺せと
政治家がスローガンを謳う。
人々はそのスローガンを批判することはなく
批判するとよそ者と認定されてしまう。
今の社会に警鐘を鳴らすような内容。
原作「吊されたよそ者」(1953)
(ハヤカワ文庫SF『トータル・リコール』収録)
(2017年 イギリス/アメリカ合作)