旧作7泊8日メモ

映画の忘備録

日本のいちばん長い日

f:id:jimmys_nooker:20201031004401j:plain

教訓として観るべき映画

 

総 合★★★★★★★☆☆☆(7

満足度★★★★★★★★★☆(9)

 

1967年製作 岡本喜八監督版

 

1945年の815日にポツダム宣言を受諾して

終戦を国民に知らしめる玉音放送が流されるまでの

1日をめぐる物語。

 

 

エンタテイメントを差し置いてでも

ドラマを伝えんとする気骨がある。

緊張感も高い。

 

名優たちがモブに徹するような

ドキュメンタリーな作りになっている。

 

あまりに登場人物が多いので

原作を先に読むなど基礎知識がないと見通すのは厳しい気もするが

先人のリアルドラマを体感出来るマスト映画。

オススメはネットフリックスで日本語字幕をつけることで

登場人物の名前が分かって良い。

 

戦争はよくぞ止まったと思う。

軍部は本土決戦を主張してたわけで

止まったことが奇跡に近い。

 

もっと先なら更に数発原爆を落とされ

ドイツのように国が東西に分断されていた。

そこには

 鈴木貫太郎総理、阿南陸軍大臣昭和天皇、迫水書記官の

ギリギリの駆け引きがあったからこそ。

もっと早ければよかったが

それはあり得ず、もっと遅い可能性は高かった。

 

戦争のA級戦犯として処刑された人は七人。

他の戦犯は終身刑であろうと数年で釈放、その後名誉回復。

偉い指導部の人たちはほぼ無事でその後を生きられたのに比べ、

民間人と戦地の軍人は合わせて300万人が死亡。

戦争は庶民には割にあわなすぎる。

 

 

 物語の「宮城事件」クーデター未遂の一人、

高橋悦史演じる井田正孝中佐は首謀者であるし

近衛師団長殺害の現場にも居合わせてるはずなのに

映画の中では殺害タイミングに中抜けしてたりで関与していなくなっている。

終戦後は自決を試みようとしたが見張り役に止められたとも言っている。

その後は電通に入社し電通映画社の常務で91歳までご存命~

映画はそんな井田に忖度してるのかな?

天皇に背き徹底抗戦主張した厚木基地のイッチャッてる

偉い人も戦後生き延びてる。

 

物語とは関係ないが民間人唯一のA級戦犯、思想家の大川周明

A級戦犯になるくらい民族主義を唱えて軍事政権を焚き付けておきながら

東京裁判で裁かれると東條英機の頭をパチパチ叩き出し

精神に異常をきたした立ち振る舞いで精神障害でした〜と裁かれず釈放。

そんな人に焚き付けられてたワケです日本は。

 

クーデター主犯の畑中や椎崎は実直すぎた。

七生報国、何度死んでもまた国に尽くす。

「国体護持」を前にすると国体である天皇の言うことすら聞かない。

もしポツダム宣言が無条件降伏ではなく国体護持がやくそくされていたとしても

1億総決起を叫び戦い続けることを選ぶのではないであろうか。

 

宮城を占拠して玉音盤を奪ってでも

玉音放送を止めようとする青年将校たちは

完全にカルトではあるがその体制を作り上げて利用していたのは

国であるが、それはいつしか制御不能になる。

300万人の命という大きすぎる代償を払い

制御不能に陥っていた戦争が止まった。

 

皇居の二重橋前をよく通るのだが

ここの芝で畑中と椎崎が自害したんだなぁとしみじみと思ったりする。 

畑中を演じる黒沢年男のイっちゃってる演技がとても良い。