史実をトレースすることで
平和を問う
総 合★★★★★★☆☆☆☆(6)
満足度★★★★★★★★☆☆(8)
監督 堀川弘通
1970年制作
「東宝8.15シリーズ」の第4作。
太平洋戦争ものにハマッてしまい鑑賞。
東條英機を主人公に政府と軍部、陸海軍の対立、
戦時下のメディアの姿勢について描いている。
1936年の二二六事件から始まり
近衛内閣樹立から東條内閣~
1941年の太平洋戦争開戦~
1945年の原爆投下で幕を閉じる。
複雑な物語を明朗に仕上げてある。
史実を元に人間の駆け引きを真摯に描いている。
アメリカから石油を止められ
満州から無条件撤退を迫られ
交渉の余地も認められない時点で
日本は詰んでいて、勝てないとわかっている戦争に
講和を求めて突入していく様子がよくわかる。
戦争はA級戦犯と言われる東條や軍部の責任となっているけど
遡ると崩壊の序章は明治維新まで行き尽く。
近代国家を築くための資源の確保をアジアに求めたところまで行き、
アメリカとの衝突は避けられなかったことになる。
もし戦争が避けられる方法があったとするならば
アジア戦略を欧米露と交渉しながら進めるしかなかったのだろうが
それでも他国を侵略することがその国々から全面的に認められるわけもなく
火種が中国から出てる以上遅かれ早かれ叩きのめされていたのだろう。
内政的な大きな失敗として
天皇を神として国家を作っているので
それを強権的に使うと国全体がカルトになってしまい
精神論・宗教論に支配される体制になってしまい
降伏も認めない。
負けていようが一億総玉砕ということになり
特攻隊が生まれ
最後は原爆の被爆国にまでなってしまう。
国体が命を惜しまない国民を作るゆえに
危ない作りになっている。
言論も統治されている。
そんな言論を扱うメディアにも一石を投じた構成。
大きな代償を払って掴んだ平和を壊さないために
後世に残された映画でもある。